ノハナショウブ
(野花菖蒲)
アヤメ科 アヤメ属
Ridaceae iris

北海道から九州にかけて湿地や草地に群生する高さ40〜80センチの多年草。 葉は直立し、長さ30〜60センチ。幅約1センチで、中央の葉脈が太くて目立つ。 アヤメやカキツバタは、中央の脈が目立たない。外花被片の中央に黄色い筋がある。

 

 
 園芸種として人気の高いハナショウブ(花菖蒲)の原種だそうで、ハナショウブは この花を元に、江戸時代より改良を重ねてつくられて来たそうです。ちなみに万葉集に 出てくる、菖蒲とかいてアヤメと読むものは、サトイモ科のショウブ(セキショウに 似たもの)のことだそうです。
 似た仲間にアヤメ、カキツバタがありますが、いずれアヤメかカキツバタ、なんて いわれるように、仲間を見分けるのには、いくつかのポイントを覚えた方がよいよう です。そのポイントを、上に書きました葉の特徴以外で少しあげてみますと、
 第一に生息場所ですが、一番乾いた場所を好むのがアヤメ、ノハナショウブは真中で、 湿地・草地がOKです。カキツバタは最も水湿を好み、水辺に群生することが多い そうです。
 次に外花被片の模様ですが、黄色に網状の模様があるのがアヤメ、黄色い縦の筋状の 模様があるのはノハナショウブで、同じような縦の筋状の模様で筋が白いのがカキツバタ です。
 しかし、日野市内にはアヤメ科のこの3種の内で、ノハナショウブしか自生は見られ ません。
 現代人は日本古来の自生種よりも園芸種に囲まれて生活していますので、湿地でなく ても育てられるジャーマン・アイリス(ドイツアヤメ)の方がおなじみかもしれませんね。 こちらは葉の色が白っぽく幅が広いのが特徴です。少しこぶりで葉も細く、ダッチ・アイリス (オランダ・アイリス)と呼ばれるものもあります。
 日本自生種のアヤメ、カキツバタの花期が5〜6月、ノハナショウブは6〜7月なのに 対して、ジャーマン・アイリス、ダッチ・アイリスの花期は早く、4月頃より花が咲き始めます。
 

 
     
 

 
 ノハナショウブは日野市近辺では、大体6月の中頃に開花が見られます。市内では、 黒川清流公園に自生しているものが何株かありますが、なぜか近くによく似た園芸種も 植栽されています。
 自生に好ましい湿地が減ったことや、花がきれいなので人に持ち去られたことが原因で 生息数を減らし、東京都の保護上重要な植物のリストでは、Aランク(絶滅危惧種)に 指定されています。黒川清流公園のものは、二重の柵によって保護されていますが、 市民の多くの方々が、こういった植物を理解して、皆で大切に育てるような社会にして 行きたいものです。
 

 
※解説文の作成にあたっては、主に山と渓谷社発行のポケット図鑑 1・2・3、山渓ハンディ図鑑1・2を参考にさせて頂いています。
 

 
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