都市の雑木林を守るために

       都市住民にできることは?

里山管理の経験者を招いてのミニシンポジウム

“里山シンポジウム”開かれる


  平成12年11月26日・日野市生活保険センター
まちづくりフォーラム会誌「湧水」25号より

クヌギのどんぐり


 多摩地域に点々と残っている雑木林。かつては地域の人々に薪や炭、落ち葉などを供給し、なくてはならない林だったのですが、今ではその価値を失い、開発しにくいところ以外は殆どその姿を消してしまった雑木林。それが最近になって雑木林の生物は多様性に富んでいるとか、萌芽更新・炭焼き・下草刈りなどを都会の人々が嬉々としてやり始め、その価値が見直されてきている。

 既に「湧水」にてお知らせ済みでご存知と思われますが、11月26日に日野市生活・保健センターにて“里山シンポジウム”が開かれました。出席者は主催者、パネリストを含めて30名弱。今回のシンポジウムでは、わずかに残った雑木林が相続の発生などにより止むなく開発宅地化され、消えて行くのをどうしたら食い止めることができるのか。また、既に緑地として公有地化された雑木林をどうやって管理して行くかの2つが、大きなポイントとなりました。



■内城(うちじょう)さんのお話

 1人目のパネリスト内城さんは、およそ14年ほど前より自宅近くの荒れた公園を市役所と交渉し、地域住民の手でコナラ、クヌギ主体の雑木林に作り変え、多摩地域から失われつつあったかつての植物達を蘇らせた方。最近では公園から団地の法面にまで活動範囲を広げられ、公園を緑の湖、法面を緑の川として本来多摩地域にあった植物達が広がることを夢見ておられる。今回は刈り払い機から幼木を守る方法や、廃棄される業務用冷蔵庫を使って物置を作られた時のお話などをして頂いた。これは打合せの時からの内城さんの希望でもあったのですが、若干早めに終えられたので参加者からのたくさんの質問に答えて頂きました。


■岸さんのお話

 2人目のパネリスト町田市から来られた岸ヨネ子さんは、25年ほど前より七国山と、山崎にある貴重な自然の保護に情熱を傾け、七国山は東京都の保全地域に、山崎のカタクリの群生地は市有地となるまで努力され、今も「七国山自然を考える会」「町田かたかごの森を守る会」の会長として、その管理活動をされておられます。

 今回のお話により、活動を始めるに当たって植物の勉強をとてもされたこと、行政や地主、建設会社達と話し合いをし、長年の地道な努力が少しずつ実を結んで今日の状態になったことがよく分かり、参加者の多くの方々が感動したと仰っていました。


■田村さんのグループのお話

 3人目のパネリスト田村はる子さんは日野市百草の倉沢地区の地主さんで、ご自分の土地を畑として市民に貸しながら緑存続の道を模索されておられます。貸し農園の一帯を「アリスの丘」と名付け、パソコンによるプロ顔負けの会誌“アリスの丘 風の丘ファーム” を発行され、その中で畑仕事の情報交換の他に、近隣の植物の解説や里山管理活動のボランティアを募集されたりしています。その「アリスの丘」の会員峰岸立枝さんからは、最近倉沢地区で市の緑地となった雑木林の管理活動の報告、同じく会員で由木ファーマーズでも精力的に自然保護活動をされておられる川崎明さんからは、倉沢地区の緑保全の状況が八王子市堀之内地区の状態にとてもよく似ていて、保全が難しい状況であるとの報告がされました。


■座談会

 一通りパネリストの方々のお話が終わり、参加者を交えての座談会では、百草から来られた方が、最近土地を相続したがあまりにも相続税が高いので、その殆どを返したことや、知らない間にご自分の土地の木を伐採されてしまいその復元に困っていたので、内城さんのお話がとても参考になりましたとのお話も出ました。



■感想

 緑の保全を考える色々な地域、色々な立場の人々が集って、ざっくばらんに意見・情報の交換をする。それぞれの参加者がそれぞれの収穫を得て帰る。そこから新たな活動や、人と人との繋がりが生まれてくるのではないでしょうか。私は岸さんの「私達が自然を守るのではなく、自然が私達を守ってくれている」というお話に何か考えさせられるものを感じました。また、パネリストの方々の温かい心にじかに触れることができたのが、何よりの収穫です。

 緑地管理ボランティアの会が“まちづくりフォーラム・ひの”の組織に加わり、7月に申請した日本財団のボランティア支援事業の申請が認められました。今回のシンポジウム開催に、日本財団の支援が大変役立ち感謝していることを付け加えさせて頂きます。

報告・緑地管理ボランティアの会 松村 良