真夏のミステリー
その4 2000年夏のクロムヨウラン
このページは、(その1)からの続き物です。初めてご覧になられ
る方は、(その1)からご覧なられることをお勧めいたします。
さて、昨年あれほど夢中になって観察したクロムヨウ ランはどうなっただろう。ぼちぼち茎が出てきたかなと 思って見に行くと、案の定昨年観察したふたつの株から 5センチ前後の茎が、それぞれ2本ずつ出ていた。 右の写真で左の太くて途中で折れている茎は2年以上 前の茎。右の黒くて長い茎は昨年のもの。真中の下から 緑、白、黒っぽい色をしている茎が、今年出てきたもの である。突然出てきてどんどん伸びる様は、まるでキノ コのような感じである。 |
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それから10日ほどしてまた見に行くと、それぞれが 10〜15センチほどの高さになっていた。左の写真か ら開花前の茎の色が白っぽいということがお分かりにな ると思う。 去年の最初の花が開花したのが7月30日だったので、 もうきっと咲き始めているだろうと思いながら行ってみ ると、ひとつの株は今日が開花日のようだ。しかし、も うひとつの株(写真下)は、今日も咲いているけれども 既に咲き終わって萎んだ花弁が見られるので、昨日か一 昨日頃に咲き始めたと思われる。 |
このふたつの株は、尾根から少し下った ところにある。撮影を終えて尾根道に戻る 時、いつもと違うところを登って行くと白 いキノコがたくさん生えているのに気がつ いた。とりあえずしゃがんで三脚を低くし て写真を撮って振り向くと、何とあのクロ ムヨウランが花を咲かせているではないか。 ギョッギョッギョッ!!。「ありゃーっ!」 思わず大声が出た。その辺り一帯に花の咲 いている株がいくつもあるではないか!。 その辺り一帯のクロムヨウランを数えて |
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構あるではないか。つまり昨年あれだけ探して見つけられなかったクロムヨウ ランが、こんなに近くに、こんなにたくさんあったということだ。『開花期だ から見つけられたんだな。』とつくづく思った。何しろ白い花がなければ地面 に20センチ前後の枯れ枝が刺さっているとしか見えないような植物だからで ある。 昨年親しくして頂いている植物の専門家の方おふたりをご案内したところ、 あいにくその日は咲いている花はありません。おふたりとも蕾や萎んだ花を撮 影して帰られた。それがきっかけとなりこの植物はどういうふうに花を咲かせ るのだろうかと開花のようすを観察した。昨年の雪辱とばかりに、また昨年の おふたりをお呼びした。前日見に行くと、今にも開花しそうな蕾がいくつもあ ったものの、夜になってものすごい雨が降り、心配になって6日の朝6時頃開 花を始めた花があるかどうか見に行った。幸い開花を始めた花はたくさんあり、 この日は天気も回復して、正に昨年の雪辱を果たすことができた。 |
新しい株を見つけた辺りをよく見てみると、新しい株はどうも7個どころで はないようだ。『これはひとつひとつに番号札を付けないと調べられないな。』 と思った 割り箸に白いビニールテープを貼って、小さい旗のようなものを作 った。それに油性のマジックインクで番号を書き、クロムヨウランの株のそば にひとつひとつ刺していった。その結果クロムヨウランは27株もあった。1 番から順に写真を撮り、クロムヨウランの生育環境の資料として地表の状態も 写真に撮っておいた。 |
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この日から観察記録を書き込む表を作り、観察の度に記入することとした。 新しい株が今後見つかった時のことを考えて、株のナンバー欄を34まで作っ た。また8月19日からは昨年同様に尾根の上迄電線を運び、1時間おきの自 動連続撮影も始めた。 昨年の観察結果に基づく推論『夜明けとともに開花を始める。』は今回もそ うであった。しかし、その後の部分が今年は違っていた。午後になっても、日 が沈んでもいっこうに閉じない花もある。また閉じた花も翌日落ちてしまった り、その上、開花前に萎んで垂れてしまう蕾まで続出しだした。一体今年のク ロムヨウランは、どうなってしまったのだろう?。 ※表をクリックすると8月19日の観察記録表がでます。 |
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