Tくん救出大作戦 その4

彼とランチを食べている時の会話の中で、自分はお金はたくさん持っていると言っていた。別荘を買えるほどの貯金があると。それが本当なら彼のお金、もしくはクレジットカードが使えればいい訳である。

夜何回も彼に電話をかけていたら、運良く出たので「家に現金とかクレジットカードとかないの? あれば警察官呼んで立ち会ってもらって中に入り、おれが家の中から持ち出すから。」というと、あるとのこと。また、お前は信用しているから、警察官など呼ばなくていいと。そして鍵の隠してある場所と、現金、クレジットカードの入っているカバンのしまってある場所を事細かに説明した。

翌朝早速彼の家に行くと、確かに言われた場所に家の鍵、現金、クレジットカードの入ったカバンがあった。お~! これでかみさんに離婚されずに、彼を日本に戻すことができそうだと安堵した。自宅に戻り、かみさんとカバンの中をチェックすると、クレジットカード2枚と、封筒に入った現金32万円、それに預金通帳などなど大事なものが皆入っていた。

早速大使館に連絡すると、クレジットカードが使えるかチェックし、使えるようならその情報を彼のスマートホンにメールで送っておいてくださいとのこと。そして今日は金曜日なので、彼が大使館に来てくれればその日のうちにパスポートを発行(彼はパスポートも無くしていた)し、航空チケットを購入して日本に送り返しますとのこと。

午前11時頃彼がまた電話に出たので、大使館で帰国の手配をしてくれると説明し、早く大使館に行くよう伝えた。その時の受け答えでは、あと30分で大使館に着くとか言っていた。しかしその後待てど暮らせど大使館から彼が着いたとの連絡が入らない。

昼食後また彼に電話をしたところ出たのでなぜ早く大使館に行かないのかと言ったが、なぜか電話番号が分からないとか、わけのわからないことを言っていて埒が明かない。そしてとうとう大使館の閉まる時間になってしまった。大使館の人もずっと待っていたのに...。帰国は月曜日までお預けとなってしまった!

その5に続く

Tくん救出大作戦 その3

何しろランチに連れて行ってもらったお礼にと、27年前のお茶をよこす彼にお金を注ぎ込んだら、絶対に戻ってこないとかみさんは思っている! 分からないこともない。世の女性は皆そう思うだろう!

女性大使館員の方は、しきりにネットから航空機のチケットを買えるサイトの説明をしている。とりあえずその女性が本物の大使館員かどうかも定かではないので、下記の内容のメールを在韓国日本大使館宛に送信した。

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先程、大使館の方からご連絡いただきました◯◯です。 航空券をeチケットで購入する際に、わたしの方で5,000円程工面していただきたいとのお話ですね。日本のどこかの空港に着いたとして、そこから自宅までのお金も無いと自宅に辿り着けませんよね。もう少し詳しい説明が必要な様に感じます。
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それにしてもなぜわたしがお金を出さなければならないのか...
在大韓民国日本大使館のサイトにこのような説明があった。



できないことの一番目が 金銭の供与、立て替え及び支払い保証 だ。

彼の妹さんにも突っぱねられ、藁にもすがる思いでわたしに電話してきたのだろう。それにしても間抜けな話である。少し余分にお金を持っていったり、クレジットカードを持っていったりすれば起こらないトラブルだ。それよりも帰りの飛行機に乗り遅れさえしなければ起こらないトラブルだ。

後になってつくづく分かったことだが、彼は重度のアルコール中毒患者のようだ。そのせいで彼の行動は常識では理解できないことばかりだ。

その4に続く

Tくん救出大作戦 その2

今までの情報を整理すると、彼は少なくとも3月17日よりも何日も前に韓国に行き、帰れなくなっている。それが3月28日の電話での会話で判明。韓国にいるとなると、彼への電話は国際電話になるのか? 電話代かさむのか? その後彼にはショートメッセージで、日本大使館の住所、電話番号、サイトのリンクなどを送ったがなんの返信も無かった。

その後何回も電話したが、圏外状態が続いていた。そして一週間ほど経った4月4日、とうとう韓国の日本大使館から直接わたしに電話がかかって来た!

「もしもし韓国の日本大使館員のKと申します。実は◯◯さんのお知り合いのTさんの件でご相談がありお電話いたしました。」女性大使館員の声。「Tさんは韓国から帰国の際に飛行機に乗り遅れ、その後飛行機に乗るチケット代がなく韓国で野宿生活をしておられます。なんとか帰りのチケットをそちらで予約し、こちらにメールで送っていただけませんでしょうか?」といったような内容だった。

すかさず「なんでわたしなんですか? 妹さんがいらっしゃるでしょう?」と質問。「妹さんには既に電話でお願いしたのですが、兄とは一切関わりを持ちたくないと断られてしまいました。」と女性大使館員。どうも彼がその女性大使館員にわたしからのショートメッセージを見せたらしい。それでわたしの電話番号が分かったらしい。

うちで既にTくんの件は、かみさんとの会話の中で話していて、かみさんは「Tくんにお金を出すようなことになったら、離婚だからね!」と念をおされている。そのことを女性大使館員の方にも説明した。

その3に続く