Tくん救出大作戦 その1

Tくんは小学校、中学校と一緒だった男性だ。彼は大学卒業後、地元のT信用金庫に就職し定年まで勤め上げたらしい。家もわたしの家の近くで、時々出会って立ち話をする程度の仲だった。未だに独身で、連れ合いのいるわたしを羨んでいる。

そんな彼とは一年ほど前から月に一回ほど会って一緒に外食をするようになった。「付き合ってくれる人間はお前だけだ!」とか、「人と一緒に外で食事するなんて何年ぶりかだ!」とか言っていた。 最初に行ったココスでは、ランチメニューに付属していたドリンクバーのオレンジジュースを何杯も何杯も、その都度新しいコップに注いで飲んでいた。帰る時にはテーブルの上がコップだらけだった。次に行った丸亀製麺では、帰ろうとすると彼はお盆にこぼれたたくさんのネギを、お盆を持ち上げて口に当て「まだこれ食べてから」と慌ててかき込んでいた。その時はうわ~っとびっくりした。
Tくんよりもらったお茶


何しろケチらしく、丸亀製麺に行くため自宅に車で迎えに行った際に、家の中からお茶のパックを裸で持ってきて、飲んでくれと手渡された。ありがとうと言ってもらって帰って賞味期限の日付を見てびっくり! なんと1996年6月と印字されていた。27年前に賞味期限の切れているお茶だった。逆によくそんなに古いお茶を封も切らずに持っていたもんだ!

そして暮に近い時に行った中華料理屋では、体格もそれほど良くなく痩せているのに、ラーメンをひとりで2杯食べた上に「おれはお酒が大好きなんだ」と言ってレモンサワーを5杯くらい飲んでいた。その中華料理屋ではレモンサワーは1杯390円なので、レモンサワーだけで二千円近く払っていた。ものすごくケチ(節約家)だけれど、お酒には出費を惜しまない。

色々彼の話を聞いていると、年に何回か韓国に行くらしい。安い旅費で、自分が外国人として扱われるのが嬉しくて行くらしい。その年の暮にも行くようなことを言っていたが、成田発の飛行機に間に合わず行けなかったと言っていた。

そして年が明け、1月と2月は自治体のごみ処理施設に併設された安い入浴施設に連れて行ってあげた。帰りには、途中にあるすかいらーく系の『から好』の唐揚げ定食と安いレモンサワーを教えてあげ、食べて帰った。運転手のわたしは、もちろんお酒は飲まない。普段も飲まないのでまったく問題はない。

彼の家は前に書いた通り近所なので、ウォーキングの途中で家の前を通っていた。一人暮らしなので、見守りの意味もある。最近うちの近くでも孤独死して警察官が鍵を壊して家に入って確認された人が3人もいるからだ。3月に入って、彼の家に止めてある自転車が無いことに気がついた。一週間以上その状態で、家の様子もまったく変化が無いので彼に電話してみた。

何回もかけてやっとでた3月17日の彼の話では、また韓国に行ったが、帰りの飛行機に間に合わず、船で帰国して今成田に文句を言いにきているとか...。よく分からなかった。

その後何日間、何回かけても彼は電話にでなかった。今までの経緯をプリントし、警察署に問い合わせてみようかと準備もしていた。そして一日に何回か電話し続けていたところ、3月28日にやっと彼が電話に出た。彼はまだ韓国にいるらしい。酔っ払って帰りの飛行機に乗り遅れ、持っていた現金が少なかったので、帰りの飛行機のチケットも買えず未だ韓国にいるようだ。

わたしが承諾もしていないのに勝手に、わたしが彼にお金を送るようなことを想定して話をしている。「お前が送るにしてもどこに送ったらいいか分からないな~」とか言っている。なんでわたしがお金を送らなければいけないのか。妹がいるじゃないか。「頑張ってね!」と言って電話を切った。

その2に続く

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